あるがせいじ 新作展

東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3階 03-3475-0166
11:00-19:00 日・月・祝休 http://roentgenwerke.com/

1994 東京芸術大学大学院修了/1999 Space kobo & Tomo(東京)/2001 Gallery点(石川)/2002 「ignition」、レントゲンヴェルケ(東京)/2003 「(rx3)2」、レントゲンヴェルケ(東京)
受賞:1994 「新潟野外彫刻大賞」入選/1999 「小野画廊立体作品小品展」入選、小野画廊(東京)

・・・あるがさんの作品は正方形がキーワード。正方形にこだわる理由を教えて下さいますか?

 正方形は人為的な単純な形だと思うからです。ある意味人が理解しやすい形だと思います。長方形であれば何故長方形なのかと思ってしまうし、円になれば完璧すぎるというか・・・ちょっと違うニュアンスを感じてしまうんです。
  たとえば正方形が集まることによって、正方形のイメージが微妙に崩れるじゃないですか。それがまたおもしろいんです。組み合わせることで動きが出てきたり、柔らかさがあったり、逆に動きを止めることも出来る。正方形は四辺が同じ長さですごく単純なものなんだけれども複雑なんです。自分で作っていてもすごく不思議で奥が深いなぁって、まぁ、単純に好きというのもありますけど・・・。

・・・作業としては正方形に細かく紙を切りぬいて重ね合わせているんですよね。向かって右側の作品と・・・左側の地図の作品との関連を少し説明していただけますか。

 何故地図が出てきたかというと、僕は以前、彫金という技法で金属で抽象的な・・・四角や立方体に近い形を作っていたんです。それが今の技法に段々と移行していったんですよ。ですから立体と平面とかを考えているうちに出てきたものだと思います。実際地球は球体なのに、四角い平面にむりやり置き換えられている。それを再構築してみたい気持ちはありましたね。
この日本地図は図が抜いてあるんです。その抜いた部分をこの正方形に凝縮してあります。アメリカ合衆国も図が抜いてあるんです。

・・・アメリカや日本を切りぬくと、このぐらいの大きさにしかならなくなってしまうのには驚きました。やはり正方形にするために、切りぬかれたのですか?

 日本という国を正方形で見たことがなかったので、正方形に切って組み合わせるとどうなるのか、やってみたかったんです。北海道はこの真ん中辺です。海岸線にいくほど小さくなっていきます。この画面の白い余白の部分が世界地図の大きさなんですよ。それに対しての日本の大きさが示されているんです。

・・・日本は密度がすごいですね。たとえば中国を正方形にしたらアメリカより大きくなるんでしょうか。

 メルカトル図法だとロシアの方が大きくなるかもしれません。

・・・メルカトル図法というのは、メルカトルが考案した正角円筒図法ですよね。確か中学校で習ったような気がします。

 メルカトル図法は1番最初に教わった図法で、自分の頭にしっかりとしたイメージのある図法なので使いたいと思ったんです。それに地図を切るということは国や国境とかが何もかもなくなりますからね。

・・・地図の図法はいろいろあると思うのですけど、どの図法にしてもそれは地球の見え方じゃないですか。実際に俯瞰するのは、宇宙に出なければ見えないわけですから、それは誰が決めたんだろうと不思議に思います。

 確かに勝手に決められたものですね。
時間で分けた地図もあるんですよ。たとえば飛行機の飛ぶ時間で距離を出していくのもありますし、最近は夜の地球の地図もあるんです。夜に明かりが灯る部分・・・まっ暗ななかに、人のいる大都市がファーと明るくなってくるとか。

・・・地図によって違うゆがみ方をしてくるというのは、作り手の尺度に合わせた・・・それは世界の解釈の仕方だと思う。皆手探りで自分の場所を探っているような・・・。

 そういう意味合いを感じる方もいらっしゃると思いますが、僕のやりたいことはもっと簡単でストレートなんです。この作品にしても海と陸をひたすら切って、それを並べ直して貼っていくと、どのぐらいの比率になるか見てみたかったからです。最初のきっかけはそこなんですよ。イメージを確かめたくなるんです。

・・・私は少し深読みしすぎましたか?

 いろいろな捉え方をしていただくと嬉しいですね。あまり作者の意図だけに偏ってしまうとおもしろくないと思うので、作品をおもしろいと感じていただくのが一番嬉しいですから・・・。

 たとえば平面であれば描くことで、空間の揺らぎを表出することが出来るけれど、あるがさんの作品は、紙を切りぬく超技巧な手技で多次元空間を作り出してしまう。重ね合わせている部分がレイヤーという層を形成していて・・・はるかなMikrokosmos に引き込まれていくイメージをもちました。その空間にある揺らぎ・・・地図の作品もそうだけど・・・。その解釈の仕方は人それぞれ、私は解釈というのは同時に新しい創造を生むことだと思っているんですよ。
とにかく会場に足をはこんで実際に作品に接することをおすすめします。  ~7月2日まで。