高梨裕理展
19 7 0東京生まれ
19 9 6小畠工房修了
19 98同工房研究科修了
【展覧会】
2005 アーティストインレジデンス(メキシコ ペラクルス州ハラパ)・個展ギャラリーNEBUROSA設置JARDIN DE LAS ESCULTURAS・個展ギャラリーカスミ(元住吉)・個展ギャラリーアートポイント(銀座)・ギャラリー惺 メキシコー日本交流展・GAW展 ゴールデン街(新宿)/2004 拡兆する美術(つくば美術館)・青年作家の精鋭展 (名古屋ギャラリー彩)・トロールの森ユニークな造形達(善福寺公園)・個展メタルアートミュージアム光の谷(千葉印旛村)・SONDA TERESCOPIA=望遠探測=日本一メキシコ(三鷹芸術文化センター)(Galera Raquel Tipol)/2003 雨引きの里と彫刻(茨城大和村)・雨引きの里と彫刻小品展(ギャラリーせいほう)・オペラ高山右近舞台美術(東京文化会館他七か所)・個展ギャラリーAPA(名古屋)/2002 アーティストインレジデンス(協カプエルタ アピエルタ財団)・個展サンタクルス現代美術館設置サンタクルス技能大学(ボリビア サンタクルス)・神奈川県美術展(大賞)97(特選)・家Home visito 6人展/2001 ポリビアー日本 版画交流展(ラ、パス/サンタクルス)・個展ギャラリー4GATS(世田谷代田)/2000 個展ギャラリーJIN(吉祥寺)/1998個展ギャラリー21(新橋)、他95年より発表
・・・タイトルは「反転の水」。静かな作品ですね。
今回は「静けさ」を出したかったんです。
タイトルの「反転の水」というのは・・・私はよく今自分の考えていることを、逆側から見てみたらどうだろうと思うことがあります。例えばアトリエに籠もっていて、地球の裏側を・・・。
・・・地球の裏側ですか?
アーティストレジデンスで、2002年にボリビアへ、メキシコには今年行って来ました。そこに友達が暮らしているんですよ。その人たちが今何をやってるのか考えたり「自分が今そこにいたら」というような感情を思い浮かべて、今いる位置の反対側から、自分を見つめていることがよくあるんです。
・・・作品の形状を拝見していると、どちらが上とか下ではなく、鏡面で反転しているイメージを感じます。
この作品は樫の木の中をくりぬいて上と下を作って合わせています。その形状が、私の中で「反転」という意味を持たせているんです。
・・・ 上下がピッタリ重なっているわけではなくて、この隙間のニュアンスから向こうがかすかに見えるというか・・・。
この隙間とか、ちらっと見える感じもそうなんですけど、「向こう」を感じることが自分の中では大事な部分。先を見つめるというのではなくて、「向こう」を見たいのかもしれない。
・・・「向こう」ですか?もしかして「反転の水」は、メキシコやボリビアに行かれたことも影響があるんでしょうか。
ええ。自然を見たことがとても影響していると思います。ボリビアに行く前から、私の中には、「向こう」とか「流れ」というイメージはあったんです。
でも実際に、今まで見たこともない自然や景色に接したときに、強烈にそこに自分がいるという事を意識しました。特に見渡す限り真っ白な世界のウユニ塩湖に立ったときは「私は湖の上に立っているんだ」ということを意識したんです。その姿が日本に帰ってからも思い出されて・・・。
私は作品を制作するときに、まずぼんやりとした映像が頭の中に浮かんで来るんです。ですからアトリエに籠もって制作しているときも、映像がフィードバックして来る。ただその映像は一つではなく、いろいろなものがリンクしていて、それがある「形」につながっていくんだと思います。
・・・私はボリビアに行ったことがないので、ウユニ塩湖をネットで調べてみました。ウユニ塩湖は世界最大の塩湖。周りをアンデスの山々に囲まれ、塩分を溶かした雪解け水が大量に流れ込む湖。広さは約12,000平方キロメートル。白く固まった塩の上に、場所により深さ数センチ~数十センチの水がたまるそうですね。ページに「湖の真ん中に立つと、別の惑星に来たような気分になる」と書かれてました。その画像を見ていると、湖が鏡面になっていて台地が反転して見える。水平線は遙か彼方まで続き、どちらが上でどちらが下かも判然としない無限の世界。それでやっと高梨さんがおっしゃっていた。「向こう」という感覚が少しわかったような気がしました。
高梨さんの作品には「自然」と共存しているというか。「自然」に寄り添う目線を感じます。
「自然」は好きです。最近は流木を使う作品は減ってきましたが、山や川に出かけて枝とかいっぱい落ちていると、私にとっては宝の山に入ったみたいな感じがします。枝を触っていると、しなり具合や曲がり具合を作品の中に取り入れたくなってくるんです。それに木を使うのは心地がいい。
・・・今回の作品は、大きい作品は「樫」、小品が「櫟」。木というのは、生命の循環のイメージがありますよね。ただ現代は人のサイクルが「自然」に寄り添えなくなってきてしまってはいるけれど・・・。
循環というよりも、「流れ」というのは意識しています。 例えば自分が生活していても、何かの流れに乗っている部分があるし、感情も流れていくものですよね。
・・・なるほど。ところで彫刻家になろうと思われたのは?
子供の頃から絵は好きだったんですが、上手ではなかったんです。小さい頃に馬の遊び道具を作って誉められて、それがきっかけだったのかもしれません。それと身体を使えば、それが形となって自分のところに戻ってくる。その感覚が好きなんです。
・・・これからの展開をお聞かせください。
メタルアートミュージアムの「波紋」という作品では、動きを。今回は静けさをイメージしました。次は流れになるかもしれませんが、まだこれからなのでわかりません。
~10月1日(土)まで。