木俣創志 展

天上の宝石――名づけてはいけないもの

世の中には美しいものがたくさんありますが、ふと空を見上げれば、ありふれた景色にさえ、地上の宝石よりもはるかに美しい天上の宝石が無数に散りばめられています。

ラニエリの演奏するバッハの無伴奏を聴きました。

これは、バッハでありながら、“バッハを超えている”と思いました。
たまたま、彼の音符を通過点とし、別の世界がこちらの世界に向かってじんわりと開示されているにすぎないのです。
このような体験をしたとき、音楽はその名前を失います。

感動体験ばかりではありません。深い哀しみやよろこびにみたされるとき、そこには名づけようのない――いや、名づけてはならない何かがあります。
言葉が、空間という空間、隙間という隙間を埋め尽くしてゆく今日ですが、ふと立止まるそんな時間や空間が、名づけてはいけないものとして強く意識されるのです。

2014.10.10 木俣 創志

関連情報 木俣創志 展 2011 木俣創志 展 2009 木俣創志 展 2008 木俣創志 展 2007 木俣創志 展 2005

略歴:
1990日仏現代美術展(パリ国立グランパレ美術館)/1992.94. 96. 個展(TEPCOギャラリー,東京)/1994-97,2001-02TAMON賞展(柏市民ギャラリー,千葉)/1999-07デッサン展(ギャラリー52,東京)1997.1999-14個展(コバヤシ画廊,東京)/2001-02,8月,北海道標津町”芸術・文化の里”にて現地取材・制作/2004 第1回とよたトリエンナーレ(豊田市美術館,愛知)/等

ほか,犬養道子著『聖書を旅する1 古代史の流れ・旧約聖書』装画(中央公論社,1995),西山まりえ『見果てぬ夢の先~スペイン・チェンバロ音楽』CDジャケット(日本コロムビア,1999),エルンスト・クレー著『第三帝国と安楽死』カバー作品(批評社,1999),REMM日比谷ホテル ロビー作品(東京,2007),札幌天使病院 待合室およびCT・MRI室(北海道,2012),理想科学(株)つくば開発センター アトリウムおよび通路作品(茨城,2013),香住ケ丘・杜の家(福岡,2014)等,多数の作品を手掛ける.昨年,初デッサン集『CHARCOAL WORKS Ⅰ』(自主出版,2013)出版.

東京都出身 東京芸大大学院美術研究科博士課程修了.
現在 画家.昭和女子大学,静岡福祉大学,静岡英和学院大学,静岡県立大学 非常勤講師.
絵画サークル・ミューズ 主宰. 無所属.