渡邊加奈子 展

2008年10月16日(木)-25日(土)

新井画廊 東京都中央区銀座7-10-8 第五太陽ビル1F TEL 03-5537-3690


「X」 80×110

・・・「X」というタイトルが多い理由は。

画面に現れている形というよりも、その形を構成している要素や電波などを感じて頂ければと思って、意味を限定しないように「X」とつけました。


「X」 61x62.5

・・・技法は水性木版画。少しご説明下さい。

木版画には油性木版と水性木版があります。水性木版の場合ですと油性よりも和紙に滲み込む効果が表れやすいので季節の湿度を体感しながら創っていくことができるように思います。基本的には凹版ですから画線部分が版材面よりくぼんでいますので銅版みたいに引っ掻いた部分にインクをつめて線を出すという技法です。版木にはベニヤ板を使っていまして、まず板目に墨を染みこませてバレンを使い自分の身体の重みを掛けて和紙で摺りとります。昔からある技法で当て摺りに近い技法です。摺りは重ねれば重ねるほど趣のある風合いが生み出されてきますので摺る時には二、三十回重ねるんです。

 
「on the wal」 29x41l

・・・それはかなり重労働ですね。作品から空気を含んだような柔らかい印象を受けるのは水を使うからなんでしょうか。作品を拝見していると場の空気の温度や湿度を肌で感じて情景を描写している日本画の世界観に近いように思うのですが・・・。

空気を描きたい気持ちはすごくあります。画面全体に日本画の胡粉を使って層を薄く何層も重ねていますので、日本画の印象に近いのかもしれません。胡粉自体独特な粒子を感じる絵具じゃないですか。

・・・粒子を感じる絵具ですか。

私はラジオが好きなのですがそこには電波が飛び交うイメージがあるのではないかと・・・それと白黒のコピーのザラッとした感じも好きです(笑)。例えばこの作品「X」は昔の映画のワンシーンなのですけれどビデオテープがザーと流れていて、ある瞬間にピントが合った時に見えた像をモチーフにしました。またリンゴの作品であればリンゴの影にドキッとさせられたことが作品制作のモチベーションになっています。


「遠くのマチへ」 50x70

・・・残像みたいなイメージですか。

そうですね。ある瞬間に目に焼きついた残像といいますか・・残ったイメージみたいなものを描いていて、それは例えば映像のワンシーンであったり広告写真であったりするのですが、写真は拡大すればするほど粒子が見えて来ますよね。リアルに見えるものでも基は粒子なんだと、その粒子が心に染みこんでドキッと感じたり、私の作品はそこからはじまっているのかもしれません。

 

・・・作品に黒い線がありますよね。ノイズのようにも見えますが、刷り重ねるから出る線なのでしょうか。

そうではなくて意図的に時を刻む効果として出しています。私は時間と痕跡を重ねることで現れてくるリアルな風景を版を通すことで表したいと思っているんです。


「レッド タウン」 22.5x25.5

・・・それはある意味、物質を構成している微細な粒のみが時間を比喩的に表現できるということなのかもしれませんね。ところで何故色を使わないのですか。

タイトルに「赤」とか色を入れていることが多いんですけれど、「赤 」と言っても燃えるような朱の赤を想像する人もいるだろうし、暗い陽が沈むような赤を創造する人もいるのではないかと。ですからご覧になる方の色のイメージを限定しないために色を入れていません。

・・・個展は三回目、個展をされると見えて来るものがありますか。

制作している時は分からなかったのですが、展示してまとめてみましたら線が一つに繋がっていたというか、線で絵が繋がっていることに気づかされました。それが個展をしてはじめて発見したことです。

・・・どうもありがとうございました。

~25日まで。

(C) Kanako Watanabe