繁田直美展

2008年2月18日(月)-24日(日)
フタバ画廊 東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F TEL 03-3561-2205

■コメント「recall」

一生忘れはしないと思っていたのに時間と共に私の記憶は曖昧になり、もうそれが本当に起きた出来事だったのかさえわからなくなってしまう。写真の中の私たちは、まるで他人のように笑っている。少しずつ消えてゆく過去は、やがて形なき残像として暗闇の中わずかな光を放つだけでもう二度と触れることはできないのだ。いとおしく、そして残酷な光よ。

・・・タイトルは「recall」、思い出すというような意味でしょうか。

はい。思い出とか回想するとか、rememberと同じ意味合いです。

・・・2007年にお話をお聞きしたときに、内部に深く降りてまた浮上してくるといわれましたが「recall」との関連は。

前回と比べますと今回はかなりパーソナルな経験に基づいています。例えば今まで自分が生きてきた中で記憶や思い出がそれなりにあるのですけれど、ふっとそれを思い出したときに、本当にそれを体験したのだろうか、また昔のアルバムを見たときに出来事としては記憶しているのですが、記憶を完全に自身のものとして復元することは不可能ではないのかと疑問をもったのです。

・・・記憶を完全に復元するですか。

例えばショッキングでつらい出来事を経験すると絶対に忘れるわけがないと思うじゃないですか。またうれしいことや感動したことなども、忘れるはずがないと思いますよね。でも、何年か経つと人間の記憶は曖昧になってしまう。あんなに気持ちが揺れ動いたことなのに何故なくなってしまうのか、それを描きたいと思ったんです。

・・・確かに記憶が曖昧になることに対しての焦燥感は感じますね。

ええ。全て消えて無くなってしまうのではないかという不安はありました。ただ描いていくに従い、完全に思い出が消えてしまうのではなく形を変えて自分の中に蓄積されていくのではないかと感じてきました。

・・・お話をお聞きしながら作品を拝見して思ったのですけれども、以前は緑色が強かったのに、今回はかなり暗い闇の部分が増して見えるような気がします。緑が炎となって天に浮上していくようなイメージも感じます。

自分の内面に深く深く降りて行くということが、私の根本的なテーマのひとつでもあるので、自分の思い出に残っている数々のことがどのように変化して、自分の中に降りているんだろうと考えると、自然に闇の部分をもっと暗くしていかないと、形を変えた自分の思い出や記憶が浮かび上がってこないのではないかと思いました。そして仏教についても考えるようになったんです。人が亡くなって姿が無くなったあとに魂はどこに行ってしまうのだろうかと・・・。お坊さんからお聞きしたのですが、あるおばあさんが亡くなったときに、小さな子供がおばあさんはどこに行ってしまったのとお母さんに尋ねると、『おばあさんの姿はなくなってしまったけれど光に姿を変えたんだよ』と・・・。その言葉を聞いたときに、自分がとても大事にしてきたものとか、いろいろな出来事を記憶してきたものが、ろうそくの光のように形を変えて、それが自分を作り上げる要素のひとつになっているのではないかと思ったのです。私自身も家族との離別を体験しましたので、少しずつそう思うようになってきたのかもしれません。大切な思い出が自分の中で消えてしまうことがとても悲しくて、空虚になってしまった時期もありましたが、でもそれは違う。具体的には忘れてしまうかもしれないけれども、形を変えて自分の中に残っているのだろうなと描きながら自覚しました。

・・・ある意味、時間を経ることで記憶は曖昧になっても、描こうと思われているものは形を変えて鮮明に見えて来たということかもしれませんね。

そうかもしれません。今回の展示は隣同士の作品のサイズを同じにすることで、映画のフィルムのような要素を取り入れていますので、連続して時が経っていくイメージを感じてもらえばと思っているのです。

~24日(日)まで。

(c) 繁田直美

繁田直美
1966 東京に生まれる
1987 女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室 卒業
1992 ミネアポリスカレッジオブアートアンドデザイン ファインアート専攻科 卒業
個展
1992 ギャラリー221 (ミネアポリス アメリカ
2002 ギャラリー 人  (東京)
2004 Galerie SOL (東京)
2005 Galerie SOL (東京)
2007 フタバ画廊  (東京)
グループ展
1991 メリットスカラシップ展 (ミネアポリス アメリカ)
1991 フォーテサロン (ミネアポリス アメリカ)
1992 卒業制作展 (ミネアポリス アメリカ)
1996 板橋区美術家作品展 (東京)
2003 二人展 Galerie SOL (東京)
2005 板橋区美術家作品展 (東京)
2007 Petit SOL 展# 2 (東京)