山口暁子展

2007年11月5日(月)-17日(土)10:30-18:30

ギャラリーアートもりもと 東京都中央区銀座3-7-20 銀座日本料理会館2F TEL 03-5159-7402

・・・前回の個展、2005年の展示の時に「絹本も扱えるようになりたい」と言われていましたが、今回半分以上の作品で挑戦されていますね。ただ紙本の作品と絹本の作品とを比べると、空気感がずいぶん違うような印象を持ちました。

絹本【絹布(けんぷ)に描かれた書画を「絹本(けんぽん)」、紙に描かれた場合は「紙本(しほん)」という】には去年から取り組み始めました。去年のグループ展で初めて発表して、今回の個展からメインにしてみたんですが、元々厚塗りがあまり好きではありませんし、細かく描き込むのが好きなタイプなので、絹の方が自分には向いているような気もします。それが空気感なのか自分ではよく分かりませんが、何も描かない部分に関しては、紙本でも同じような効果を出せると思ったのですが、実はすごく難しいということも分かりました。これは紙本と並行して進めないと気づかなかったことかもしれません。絹本の特徴は、裏からも彩色ができることなんです。透過性のある絹の表と裏に積層する絵具の層……。それらが湿潤な水分を含むことによって、しっとりした空気感を生み出しているように見えるのかもしれませんね。

・・・裏と表の彩色を合わせることの効果が空間表現を生み出すわけですか。

表からの彩色だけでは、発色が強くなりすぎて空間を出しにくいように感じました。なので八割くらいは裏から色をつけています。紙の場合、かなり薄いものでも絹ほどは裏からの仕事の効果を期待できないんです。まして大きいサイズの紙だと、どうしても厚みが出ますので、裏からの彩色はやりにくいんですね。

・・・ある意味、紙本では絵具の層だけで見ざるを得ない……。

そう思います。ただ私自身、まだまだ試行錯誤の状態なんです。正面に展示した風景も本当は絹に描きたかったんですけれど、絵絹を何枚かの木枠に分けて描くことになるので、繋ぎ目が難しくて。……絵絹はサイズが限られているので、物理的に難しくなってしまうんです。

 

・・・大きい作品というのはやはり必要ですか。

個人的には足元にあるような小さな風景のほうが実感を持って描けるような気がします。しかし、自分を鍛えるという意味では、大作を描く必要があると思います。取材から描く技術まで、まだまだ勉強が足りない部分が多いということを思い知らされますので。

・・・足元にある風景というのは、日常性を重視するということですか。

日々の生活を送るなかで自然と見えてくるものというのが、とても魅力的に思えるんですね。それに最近になって、ようやく日常と制作というか、生活とモチーフやテーマとの繋がりを大切にできるようになってきたようにも思います。今回のモチーフも、犬の散歩の途中に道端で摘んだ野草とか昔から庭に咲いてた椿とか、最近餌付けしているキジ鳩とか……。
好きな事とやりたい事、それに出来る事。この三つの区別がとても曖昧だったんですが、絵を続けることでそれが少しずつ整理できてきたかなとも思います。いままで「もの」に誠実に接して来なかったなとしきりに反省もしてるんです。誠実に接すると言っても、ただものをリアルに描く目的でということではなくて、何と言うか、その本質を少しでも写しとりたい、とでも言えばいいんでしょうか……。要は、植物でも動物でも人が創ったものでも、自然とか創造物に対して感じる素晴らしさとか美しさ、それを中も外も含めて表現できるようになりたいということなんです。基本はやっぱりスケッチで、日々の筋トレみたいにちゃんとやらなきゃダメなんですよね、現実はともかく……。それに以前よりもずっと描くことに対して感謝の気持ちを感じるようになりましたね。

 

・・・筋トレという言葉は分かりやすいですね。

〈アクロバット級の技を格好良く決めよう!〉ともがいていたのが、〈あれ、もしかして腹筋すらちゃんとできていなかった?〉みたいな感じですね(笑)。


・・・天地万物の創造主がいるとしたら、その秘密を奪うためには「物」を徹底的に観察し尽すことかもしれませんね。

いや、そんなに大それたことまでは……(笑)。形、色、質感、存在感……。「もの」って本当にすごいですよね。金平糖ひとつとってもすごい。「ここまで観察すれば満足とか描写できれば満足」なんてことは一生ありえないのかもしれないですけど。でも、できるだけ仔細に観察して、写しとるという姿勢というか作業はちゃんと続けたいですね。三日坊主にならないように自分を戒めながら。

 

(c) Yamaguchi Akiko

関連情報

山口暁子 略歴
1974 東京都に生まれる
1993 東京芸術大学美術学部日本画科入学
1997 東京芸術大学卒業
卒業制作 サロン・ド・プランタン賞受賞
同大学大学院美術研究科絵画専攻日本画専修入学
1999 東京芸術大学大学院修了
修了制作 紫峰賞受賞
個展
2003 銀座スルガ台画廊
2005 ギャラリーアートもりもと
グループ展他
1996 8人展(東京芸術大学学生会館)
1998 二人展(台東区浅草公会堂)
二人展 (日本橋トミー画廊)
2003 平和へのメッセージ展 (佐藤美術館・新宿)
2004 希展 (ギャラリーアートもりもと、GALLERY PSY・八重洲)
2006 煌星会(スルガ台画廊・銀座)