桜井久実 展 「地図 測量師編」

2007年10月29日(月)-11月10日(土)11:00-19:00

Gallery OII 東京都大田区中央3-2-16 TEL 03-5709-4270

・・・タイトルは「地図 測量師編」、少しご説明ください。

今はカーナビですとか、衛星写真や航空写真などがありますので、道がどのように繋がっているのか空撮をすれば分かってしまいますよね。でも道は本来記憶を頼りに行くような部分があり、昼夜や天気に左右されるなど、それこそ昔はいろいろな条件によって、見えたり見えなかったりしたのではないかと思うのです。そういう世界の地図を創ってみたいなと思ったのが、今回の「地図 測量師編」のきっかけです。

 

・・・地図を見るということは目的地を探すことではないですか。

「行く」ことにはプロセスがありますよね。例えばある場所を他の人に教える場合に、説明するというプロセスを含んでいるではないですか。そのプロセスはストーリーだと思うのです。そのストーリーは、萩原朔太郎の「猫町」のような、人知れぬ亜空間に入り込んでしまった感覚に近いのではないかと、私が表現したいのは、実際の座標としての地図というよりも、記憶がうろ覚えで行けたり行けなかったりするような、しばらく忘れていて偶然見つけた場所だったりするのです。

 

・・・叙情的な異空間的な要素が強いのでしょうか。

ファンタジックになるんですかね。今回の展示作品は架空の世界がありまして、そこでは道が消えたり現れたり、それはまるで捉えどころのない忘れてしまった過去の道のような、そういうものを探して測量してくれる不思議な地図職人がいると仮定してイメージしたものなんです。この大作は「案内犬」といいまして、道を創る道具に見立てています。

・・・道を創る道具ですか。

消えかけた道を呼び戻したり、記憶の中で迷ったときに方向を指南したり、あるべき場所に道を創ったりとか、案内をしてくれるような、ただこの道具は使える人にしか使えない。どのように使っていたかとか、使っている人の身体のサイズも今の私達とは同じとは限らない。むしろ分からないという設定で制作しています。ただこのように説明すると完全にフィクションの世界を表現しているように思われてしまうかもしれませんけれど、不思議なことというのは日常的にも起こり得ますよね。例えば通れたはずだと思っていた道が行き止まりだったりするような狐につままれたような感覚、そういう感覚は日常、皆が共有しているのではないかと思うのです。ですからそれをより顕著にさせた世界といいますか。人にしても場所にしても出来事にしても時間にしても、何処でもなかったり何時でもなかったり、そういうもので構成されている世界。その世界を何とか表出できないかと映像や写真、文章などでもチャレンジしています。私の中では映像も彫刻も出口が違うだけで、表したい世界は同じなんです。

・・・映像といえば、2004年に「イスカーチェリ/捜し屋」という映像作品を制作されたとお聞きしましたが。

主人公は依頼人のために入口と出口をに見つける仕事をしています。テーマが抽象的なので、映像を作る時に心がけたのは特定の場所や時代、人種を感じさせないようにすることでした。たまたま「誰でもない人」を演じてもらうのに相応しい風貌の友人がいて、その人に主人公を演じてもらいましたが、彼の名字がニカコーシェフといいまして、ロシア語では「何でもない」という意味だったのですよ。

 

・・・不思議な名前ですね。

私は黄昏時が好きで、昼にも夜にもどちらにも属していないような、撮影のときはそういう時間に撮っていました。最近思うのですが、段々闇が減って来ているように思いませんか。座標が解明されて地球が解析されて行けば行くほどすごく危機感みたいなものを感じるといいますか。でも実際は、現実の世界はもっと.曖昧なものとか、名づけられないものとか、カテゴリーに入らないものとか、そういうもので出来てきているのではないかと思うのです。

・・・ある意味、生きているということは、カオスの中に放り込まれているということかもしれませんね。

ええ。カオスに対してもっとオープンでいい。もっと受け入れてもいいのではないかと思いますね。

(c)Sakurai Kumi

桜井久実略歴
青山学院女子短期大学芸術学科卒業
武蔵野美術学園彫塑科卒業
武蔵野美術学園非常勤講師
主な個展
1996 DANCING CREATURES (木彫+ドローイング)/Spider Mouse gallery (モスクワ)
1997 RECONSTRUCTION OF THE LIFE OF ANDREI BRAGOV
(現代美術プロジェクトのドキュメンタリー写真展)/Spider Mouse galleiy (モスクワ)
1998~2004 KARKAS I~6(写真展)
/原宿ギャラリー、Gallery Winds (吉祥寺)、NC Art Gallery (銀座)他
2002、2003、2004 佐々木久実彫刻展/小野画廊(銀座)
2005 佐々木久実彫刻展"VEHICLE"/ギャラリー・アート・ポイント(銀座)
佐々木久実小品展/ギャラリーラ・メール(銀座)
2006 佐々木久実彫刻展/ギャラリーなつか(銀座)
佐々木久実展「地図」/ギャラリーラ・メール(銀座)
2007 桜井久実彫刻展/ギャラリーなつカヽb.p. (銀座)
桜井久実展「地図IIけものみち」/ギャラリー ラ・メール(銀座)
桜井久実展「地図測量師編」/GalleryOII (大森)
主なグループ展
1992 UNKNOWN FRUITION (インスタレーション)/Exhibition space in Kashirka(モスクワ)
1997 ROSTENIE CHERES OKNO /PIats across the window (ドローイング)
/Club Secret Experiment (ラトヴィア)
1999 新制作協会展/東京都美術館
2001 MOSCOW INTERNATIONAL FORUM OF ART INITIATIVES
“ART as TOURISM”(写真作品)/Moscow State Exhibition Hall Novy Manege (モスクワ)
2002 “the Hole of Babel” (ランドアートプロジェクト、平面作品/ビデオ)
/spider Mouse gallery (モスクワ)
2003 “Art and Religion”(写真作品)/Moscow State Exhibition Hall Novy Manege (モスクワ)
2004 “RAI / PARADISE”(写真・ビデオ)/Moscow State Exhibition Hall Novy Manege (モスクワ)
東京ビデオフェスティバル2004(短編映画「EMPTY BOTTLES」)
第25回神奈川県映像コンクール(同上)