市川裕司展 -genetic-

2007年10月15日(月)~10月20日(土) 11 : 30~19:00(最終日は17 : 00まで)
銀座コバヤシ画廊 東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1 TEL03-3561-0515

【展覧会詳細】

岩絵具を中心とした白色顔料を、樹脂膠を用いてボックス状の透明アクリル板に描画。
その画面体を空間へ立体的に展開した大型作品を一点展示致します。
空間に対する圧倒的なスケールと、複雑に反射・透過する画面が作り出す
多彩なイリュージョンをご覧いただければ幸いです。

 

【コメント】

genetic(命の姿体)

 geneticとは、生となり得る事象が未だ形を内に蔵し、
定められたその時間と空間に対峙するために命の姿をイメージし続ける様である。
それはフラスコで生成される新たな有機化合物のようなものか、
地球という揺りかごで打ち寄せられる波が育む生命の先鋭化なのか。

また、繰り返される描画呼応の先にいつ形が姿を表すのか、
その瞬間を見過ごすまいと画面を睨み続けることなのか。

我々の生きる自然界では引力や磁力、地殻運動、熱といった地球のエネルギーによって
存在の全てが絶え間なく動き、刻々と変化を続け様々な表情をその瞬間に刻み込む。
中でも水は非常に顕在的な変化の流れを持っており、滝や波の飛沫等、形を持たない水が、
巨大な質量とエネルギーを持って流動する様は圧巻である。

一分間に36億リットルという世界最大の水量を誇る南米イグアスの滝は、先住民の言葉で“大いなる水”を意味し深い畏敬の対象となっており、熱帯雨林に絶好の環境を作り出し多くの命を育んでいる。

同じく南米、ギアナ高地・アウヤンテプイに降り注ぐ大量の雨は、エンジェルフォールとなって絶えず怒濤のごとく放たれるが1キロ近い落差の中で霧散し地表に届く前に消えてしまう。これもまた人知を越えた自然の姿と言えよう。

もちろん日本でも多くの滝が、芸術の対象として、
また神秘性をたたえた幽玄の美を感ずるものとして水の流れ落ちる様に魅了されてきた。
他にも飛散した水滴がプリズムとなって作り出す虹、微細水滴の分裂によって周囲の空気にマイナスイオンを発生させるレナード効果等の副産物的現象は人間の身体に、快感と感動をもたらしてくれる。一方地表70%を占める広大な海では、陸との境界線が波打ち際となって水の砕ける様々な表情が生み出されてゆく。

その打ち寄せる波形にはどれ一つとして同じ形は無く、同じ瞬間も無い。
世界中の海岸に波が打ち寄せる平均数は、一分間に18回だという、これは健康な人体の一分間の平均的呼吸数と同じである。

 

人がつい波の打ち寄せる様に見とれてしまうのは、こうした体内のリズムの同調にも起因するのだろう。
このように形を持たない水から、何故こんなにも美しい形が生まれるのか、
その力強い自然の姿に美しさを感じてしまうのは人間の根源的な畏怖に因るのだろう。
そして何らかの形で表現する事を求めてしまうのもまた原理的衝動に他ならない。

この取り留めのない美を身体的リズムによって解読する、
geneticの表象は創られてゆく過程であり、未来を予感させるものである。
絶えず変化し、流れ続ける万象の中で創造され続けている様を感じ取ること、
その軌跡を心身にスケッチしてゆくことでgeneticの描画表象が
一つの命の兆しへと繋がることを祈りたい。

(c) 市川裕司

略歴
1979 埼玉県生まれ
2005 多摩美術大学大学院日本画専攻修了
  第13回奨学生美術展(佐藤美術館)
  個展(gallery.b.Tokyo)
  ウインドウギャラリー(ウエマツ画材店)
2006 real point (佐藤美術館)
  個展(コバヤシ画廊)
2007 青黒い平面(ギャラリー・しらみず美術)
  中之条ビエンナーレ
現在 多摩美術大学日本画研究室助手