繁田直美 展

2007年2月26日(月)-3月4日(日)

フタバ画廊

東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F

TEL 03-3561-2205

関連情報

繁田直美 略歴
1966 東京に生まれる
1987 女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室 卒業
1992 ミネアポリスカレッジオブアートアンドデザイン ファインアート専攻科 卒業
個 展
1992

ギャラリー221(ミネアポリス アメリカ)

2002 ギャラリー 人(東京)
2004 Galerie Sol(東京)
2005 Galerie Sol(東京)
グループ展
1991

メリットスカラシップ展(ミネアポリス アメリカ)

1991 フォーテサロン(ミネアポリス アメリカ)
1992 卒業制作展(ミネアポリス アメリカ)
1996 板橋区美術家作品展(東京)
2003 Galerie Sol(東京)
2005 板橋区美術家作品展(東京)

徐々に、そして唐突に - entoptic phenomenon

子供の頃、毎晩眠りに落ちる前にしていた遊びがある。目を閉じて、暗闇の中から徐々に浮かび上がる光の形を追いかけていくと、突然光が強くなり、その中へ吸い込まれていくのだ。まるで大きく暖かな海の底へ潜っていくような感覚は、私を深く安心させてくれた。

大人になった今でも、その感覚は日常の中で不意に訪れる。心の奥底に深く潜り、ゆっくりと自分の内側を見つめてみる光は徐々に、そして唐突に現れ、流動的に放たれ続ける。私はそのやわらかな光に触れ、再び地上に上がる。

ずっとそこにあったものだけれど、まるで初めてその存在に気づくかのように。だから何度でも潜り、触れて、また帰ってくる。

・・・タイトルは「 徐々に、そして唐突に」。

サブタイトルの「entoptic phenomenon」は、内部視覚という意味なんです。たとえば暗闇の中に長時間いたり目を閉じたときなど視神経が自分で振動をはじめて、暗闇の中なのに目の内部から光が見えてくる。それが今回のテーマになっています。

・・・2005年のテーマである「クオリア」と繋がっているということでしょうか。

ええ。「内部視覚(エントオプティック)」も主観的感覚の一部だと思います。これを考えたきっかけと言いますのは、子供のときにいつも寝る前にしていた遊びみたいなものなんです。眠りに落ちる前に目を閉じているとまぶたの奥は真っ暗な世界なのに、徐々に徐々に光る部分が見えてきて、その中に自分が入り込んで行くといいますか。ただ、子供のときは習慣になっていたのですが大人になるにつれ忘れてしまって・・それを突然思い出したのは、直島の「家プロジェクト」のひとつ、ジェームズ・タレルの作品でした。

・・・家プロジェクトですか?

家の中のまっ黒な空間に入ると、ものすごく弱い光が見える作品だったんです。はじめは光のない空間の中に身を置くというのはものすごい恐怖でしたが、暗闇の中にいると徐々に自身を感じてきて、わずかな光が見えてくるとそこに自分が入って行くような感覚を覚えました。この感覚はどこかで体験したことがあるとすごく気になり、記憶を辿っていきましたら子供の頃の視覚現象を思い出しました。そしてその感覚は子供の頃に経験した感覚と同じだなというのを、そのときに認識したんです。
だからといってただ光と影を作品にするというよりも、そこに自分が入って、すぅと落ちていく感覚、そしてまた浮き上がってくる感覚、これを作品にしたいなと思ったのです。

・・・ただ、まぶたに映る光のイメージは、人によってそれぞれ違うのではないでしょうか。

形も色も見え方もたぶん違うと思います。それは自分の内面とすごく通じるものがあるといいますか・・・流動する「心」の動きを直接映し出しているからそのときの自分の気持ちの持ちようで違ってくると思いますね。でもその「流動する心」は、人の心のさまざまな働きの大元をなすもの、むしろ自分の中に元々備わっている原始的感覚みたいなものに通じるのではないかと思うのです。

・・・それは身体の内部に垂直に降りていくことで感じるものかもしれませんね。画面の縦のストロークが、垂直に降りていく行為を促がしているわけですね。

降りて行くだけではなくまた戻ってくるんです。降りたままですととても危険なので、ちょっと触れてまた戻ってくるということを繰り返すことがすごく大事なんです。それはこの作品を描いていて思いました。いちばん暗い作品を描いてるときに、深く深く入っていってしまって。これは危ないと思うぐらいに入ってしまったので、戻らなくてはと何度も思いましたので・・・。

・・・前回の個展は確か青い作品もあったように思うのですけれど、今回は緑色一色、緑にかなり拘りがあるように思うのですが・・・。

そうですね。なぜ緑を使うのか今まで自分でも疑問だったのですが、志村ふくみさんのインタビューを見てやっと分かったといいますか・・・染色で緑色を出すには、葉っぱを絞れば自然に色が出るような感じがしますがそうじゃなくて、黄色と藍を混ぜなければ出ないらしいんです。それで志村さんは試行錯誤を繰り返し、ゲーテの色彩論を友達に薦められて読んだところこの「黄色は光を表し、藍色は闇を表す。それが結合したものは緑色なんだろう」と言う言葉に出会ってやっと分かったそうなんです。私もその言葉を聞いた途端、自分がなぜこんなに緑が気になるのか、納得できたような気がしました。むしろ「私の進んできた方向はこれで良かったんだ」と、志村さんのお話をお聞きしてとてもすっきりした思いがしたんです。

・・・2005年の個展よりも、方向性がより明確になってきたということですね。

はい。描いていくうちに段々焦点があってきたのは感じています。そしてこれを次に繋げられればと思います。

〜3月4日(日)まで。

(c)SHIGETA NAOMI